酔っ払いが怖すぎる

“お酒が飲めない人は、人生を損している”

下戸の皆さんは、一度は言われた経験があるかもしれません。アルコールに弱い私は、酔っ払って心地良い感覚なんてほとんど味わったことがなく、大損の人生を送っているわけですが、「最近の若者はお酒を飲まない」と聞いて 「時代がやっと私に追いついた」と感じています。(完全負け惜しみ…笑)

 

かく言う私も、若手の頃は居酒屋のメニューや空気感が好きだったり、社会人のシンボルみたいなBarの雰囲気に酔ってみたくて、飲み会参加率は高かったわけですが、30代の半ば頃からぱったりと行かなくなりました。

 

それは食べる方がやっぱり好きだから…とか、(頭痛や頻脈を引き起こす)お酒よりもむしろコーヒーやお茶の方が、朝まででも楽しくしゃべり続けられる自信があるから…とか細かい理由はたくさんあるのですが、中でも5年に1度ぐらいの確率で遭遇する、“恐ろしすぎる酔っ払いが怖い”・・・というのが大きいかもしれません。

 

 

超がつくほど華々しい経歴を持ちながらも、それをおくびにも出さない謙虚なジェントルマンで有名だった上司のA氏(当時60代男性)が退任することになり、プライベートでは初めて、送別をかねた食事に行った時のことです。高級寿司店のカウンターで緊張気味の私に対し、いつもの見慣れた穏やかな顔で世間話をしてくれた最初の20分はとても良い時間でした。そう・・・良い時間というのは儚いものです。

 

それは本当に一瞬を境に始まりました。

“豹変する”という演技のオーディションがゲリラ的に開催されたか、誰かが催眠術でもかけたとしか思えない、据わった目をしたA氏が突如として現れ、お店に対してネチネチと難癖をつけ始め、挙句の果てには自らの自慢話を永遠としつづけたのでした。

 

このプライベートでのたった2時間が、好感度しかなかった会社でのA氏との数年間までも、サイコホラーに塗り替えてしまって以来、特に “嫌いになりたくない人” とのお酒の席には、超慎重になってしまいました。笑

 

子どもの頃、親戚たちから「男女問わず一生大切にしたいと思える人に出会ったら、ベロンベロンに酔わせて、その姿を見て判断するといいよ」と荒っぽいことを言われた記憶がありますが、案外的を射ているのかもしれません。

 

いつもの彼や彼女の延長線上にある喜怒哀楽の豊かな酔っ払いではなく、顔つきからして何かが憑依したようなサイコな酔っ払いだけは怖すぎる・・・なんていう話を、とある研究職のBさんに軽い気持ちで話したところ、これまた想定外の答えが返ってきました。


Bさんは、本業の研究はもちろん、プライベートでも興味をそそられる事案が発生すると、数年という歳月をかけて、ありとあらゆる資料を調べ上げ、自分だけの論文を作成するのが趣味という、強烈キャラの男性なのですが、そのBさんによると先の豹変型酔っ払い現象は、すでに研究&解決済みと言うではありませんか!

 

“お酒好きが集う酒場の天井には、同じくお酒が大好きで、飲み足りなかった人の霊たちがウヨウヨいて、憑依して飲めそうな人のスキを今か今かと狙っている。なので別人みたいに豹変するのはそれが憑いたから” 

というようなことを、真剣な眼差しのBさんは、論理的かつ丁寧に説明してくれました。

 

アルコールを分解できない身としては、会話を楽しみながらも、ビール1杯にでさえペース配分に神経を尖らせていて大変なのに、それに加えて天上にいる見えない霊たちにまで、 “絶対こっちに来るな!” とか “せめて善良な方にしてくれ!” などと、気を張らなければいけないなんて・・・(僕は嫌だ)

 

こうして私は、酒場から足が遠のいたのであります。

以上、信じるか信じないかは・・・あなた次第です。笑