できれば “ご機嫌な人” でいたい

毎日毎日、次から次へと入ってくる新しい情報の大部分が素通りしていくなかで、脳内に留まって事あるごとに存在感を見せつけてくるフレーズがあります。

 

『 自分の機嫌は自分でとる 』

 

この言葉を思う時、なぜか大好きな街であるカナダのバンクーバーを思い出してしまいます。いいとこ取りの観光ではなく、1年近く “生活した” にも関わらず、とにかく会う人会う人、すれ違う人すれ違う人、そのほとんどが “ご機嫌な人たち” だったからです。

 

連日の残業で疲弊しまくっていた、カナダへ渡る直前の当時の私からすると、大人でも平日の5時頃にはフリーとなり、ジップロックに入れた豪快なサンドイッチを持参して、近所の公園や海辺なんかでピクニックをしたり、夕食後もたっぷりある自由時間を使って、ポップコーン片手に自宅で映画鑑賞をしたり・・・といった、平日だろうと毎日を当然のように楽しみ、そしてぐっすり眠る人たちの姿は、衝撃でした。

 

歩行者に優しすぎる車の運転は、警察なんか不要に思えたし、タトゥーとピアスだらけのお兄ちゃんたちが、体の不自由な人がバスに乗ってきた瞬間に、一斉に座席を譲って車いすを手伝い、何事もなかったかのように散っていく姿は、今ならフラッシュボムと見間違えるくらいさりげなかったり。

 

極め付きは、クラスメートの男子と道端で立ち話をしていた時、その彼がふざけて私の脚を蹴るマネの動作をしただけで、通りすがりの数人の男女が、一瞬で駆け寄ってきてその男子を羽交い絞めにし、私には「Are you OK?」と心配そうに声をかけてくれたことも。

 

もうここまでくると、その国民性に恋をしてしまいます。笑

 

それが医療費や老後の心配をしないで暮らせる福祉からくるものなのか、規格外の大自然の恵みが人々に平和と余裕を与えるのか、そもそもDNAの問題なのか・・・私にはわかりませんが、圧倒的多数を占める “ご機嫌な人たち” が生み出す相乗効果に包まれた日常生活は、まるでユートピアのように映ったのでした。

 


先日図書館で、本屋大賞にノミネートされた本ばかりを集めた棚が設置されていたのですが、初めて目にした青山美智子さんの「ただいま神様当番」は、我ながら大正解のチョイスでした。

 

幸せになる順番を待っている…みたいな、日々の生活にうんざりしている5人の老若男女が、ある日突然 “神様当番” なる文字が腕に書かれているのを発見し、その文字を消すために、何とか神様を喜ばせて願いを叶えてあげようと振り回されているうちに、いつのまにか事態が好転し・・・という笑って泣けるファンタジー要素もある小説です。

 

これだけを聞くと、よくありそうで想像がつくお話だと思いがちなのですが、5人の日々のうんざり感のリアリティさが半端なかったり、そこから派生する行動や思い癖みたいなものが、いかに自分を日々楽しませることから遠ざけているか・・・みたいなニュアンスの描き方が絶妙で、想像を遥かに超えてくるものでした。

 

さらには神様の定義が・・・これ以上はネタバレになりそうなので、ここはぐっと我慢しますが、これまた絶妙で唸らされます。

 

そして思うのでした。

やっぱり “ご機嫌な人” でいたい! と。