情熱は文明の利器に並ぶ?

過去に聴いた記憶すらないようなメロディのワンフレーズが、なぜか頭の中で流れ続け、それが何の曲なのか確かめる術が見つからないというもどかしさ!

グーグル検索のマイクという、それまで見向きもしてこなかったマークを初タップし、“ラ~ララララララ~♪” などと、藁にもすがる思いで歌ってみたところ、あっという間に一件落着したことがあります。

 

鼻歌検索とか、ハミングで歌って調べるというのは常識になりつつあるようですが、当時の私はそんなことは知る由もなく、ヒントになる“文字”がないと、天下のグーグル検索も使えないという先入観を崩してくれるきっかけになりました。

 

ただその曲が、なぜか見たこともないセサミストリートで使われていた音楽だった!ということや、後日同じように何度検索をしてみても、大黒摩季さんの“ら・ら・ら”を筆頭に、知らない曲しか出てこなくなってしまったのはなぜか?という新たなミステリーは、今日のところは置いておくことにします…。

 

 

そしてこの快挙を思うたびにセットで呼び起こされるのが、ネットという文明の利器がまだなかった高校時代の淡い恋・・・いやちょっと狂気の物語です。笑

 

大学入学と引越しを控えた憧れの先輩との、最初で最後のデートでのことです。デートといっても喫茶店でお茶をしただけなのですが、緊張と嬉しさで鼻血が出そうなレベルの女心を知ってか知らずか、先輩は突然しれっと立ち上がってお店の端へと歩いていきました。トイレかな?なんて思った次の瞬間、とある洋楽曲のミュージックビデオが、お店のいたる所に設置されていたスクリーンで一斉に流れ始めたのでした。

 

その日を境に、長渕剛米米CLUBとWANDSで半分占められていた私の音楽史に、洋楽という新たなジャンルが加わり、その後の人生でどっぷりとはまっていくきっかけになりました。

そしてたとえ気まぐれであっても、憧れの人が100円を払って流してくれた、記念すべきあの素敵な曲を、何としても手に入れてもう一度聴きたい!という並々ならぬ衝動に駆られてしまったのでした。

 

 

とはいえ、ド緊張で臨んだ初めてのデートで、バンド名も曲名も尋ねることができなかった、たった一回だけ聴いた曲(しかも英語)をどうやって探し出す・・・!?

 

執念…じゃなくて恋の力というのは時に奇跡を引き起こします。笑

 

翌日、CDショップのお兄さんはさぞかし怖かったと思います。目を血走らせた高校生がやってきて「にゃにゃにゃにゃ~にゃ~にゃ~にゃ~にゃにゃ~♪ みたいな感じの洋楽曲、知りませんか?」 などと、無茶ぶりをしてきたわけですから。

 

かろうじて頭に残っていたサビのほんのワンフレーズを、猫派でもないのになぜか “にゃ” で歌った私を嘲笑うどころか、洋楽コーナーにある無数のCDの中から、さらっと一枚を選び出し、“たぶんこれに入っている、To Be With You という曲だと思うよ” と、MR.BIGというバンドのアルバムを差し出してくれたのでした。

 

冷静に思い返すと何がすごいって、恋の力でも、もちろん私の歌唱力でもなくて(笑)、未来のグーグル検索に匹敵する、そしてNHKのプロフェッショナルにも推薦したくなるような、あの店員さんの能力!

偶然知っていた有名な曲だったのかもしれませんが、あの日あの人に対応してもらえなかったら、私の楽しい洋楽人生が大幅にズレていたと思うと、けっこう重要な出来事だったのではないか…なぁんて、今でも一軍として大切に保管しているそのCDを眺めながら思ったのでした。

 

ちなみに余談ですが、同じ頃、テスト期間になると金縛りにあうのが怖すぎて、それについて図書館で調べまくり、“体は寝ているのに脳が起きている 睡眠麻痺の状態である” ということを半日かけてつきとめた記憶があります。今ならスマホ片手に「金縛り、霊は見えない、テスト期間」とでも入力すれば、ほんの数分で解決できることを思うと、ちょっと恨めしくもあるわけですが・・・。

 

「現代人が一日にふれる情報量は、平安時代の一生分」

という衝撃のニュースがありましたが、私にとっては “平成のあの頃くらいがちょうどよかったのかなぁ…”などと、ちょっとノスタルジックな気持ちになるのでした。